未来への遺産
高校時代に「核融合への挑戦―無限のエネルギーを求めて」 (1974年、ブルーバックス)を読みました。核分裂を利用する原子力発電に対する事故のリスク、原油同様にウラン燃料が枯渇資源であること、放射性廃棄物が産み出されることなどからネガティブな印象を強くした反面、いずれ核融合が実用化されれたら明るい未来が開けるかもと夢を抱いたのでした。その夢も破れた感が無きにしもあらずですが、
大学進学は小学生の頃から好きだった電子工作の影響が強く、電気工学、電子工学専攻と進んだのですが、もう一つの候補は原子力工学でした。ブルーバックスの影響もありましたね。大学では、発電、送電、原子力に関する講義を受ける機会もあり、それなりに興味を持って眺めていましたが、次第に脱原発への想いが強まっていきました。
3月16日に書きましたが、そんな想いの記録が残っているのは、1998年10月23日に開設した「新幹線通勤の日々」の1998年10月26日の通勤日記です。
https://mujina.txt-nifty.com/shintsu/2011/03/13-e2a8.html
日記の中で参考サイトとして紹介したのが、高木仁三郎さんが代表をつとめていた原子力資料情報室のホームページ(当時とURLが変わっています)です。
http://www.cnic.jp/
私が高校時代に冒頭のブルーバックスを読んだ頃の1975年9月に高木仁三郎さんを専従世話人として原子力資料情報室が設立されました。高木さんは1987年5月から代表をつとめ、私が新幹線通勤を始めた1997年12月にはライト・ライブリフッド賞を受賞しています。この賞は、ウィキペディアによれば、1980年にスウェーデンで創設されたもので、現在のもっとも切羽詰まっている問題に対し実際的模範的な回答を示した者を表彰する賞でで第2のノーベル賞と称されることもある名誉ある国際的な賞だそうです。高木さんは、2000年に大腸癌で逝去されました。
さて、本棚には、別冊宝島483号「これから起こる原発事故」(2000年1月15日発行)があります。今から11年前に購入したものですが、冒頭から、「もし、巨大地震が原発を襲ったら!」、「プレート沈み込み境界の巨大地震の発生メカニズム、津波」、「原子力発電所・核燃料施設の分布と大地震の発生環境」など、実際に起きたことが想定されていました。
いろいろ思うところはありますが、こんな過去を振り返ったところで、使用済み核燃料について少し考えてみようと思います。脱原発、反原発の立場で書かれている資料から引用すると不公平と言われるかもしれませんので、推進する立場にあると言える電気事業連合会(清水会長・東京電力)のホームページで公開されている資料を眺めつつ新聞に掲載された情報なども眺めてみようと思います。
http://www.fepc.or.jp/
まずは、原子力発電によって発生する放射性廃棄物の量、高レベル廃棄物(1.4トン/日)、低レベル廃棄物(76トン/日)とあります。一般廃棄物、産業廃棄物の量と並べて圧倒的に少ないと書いてあります。低レベル廃棄物は埋設処分が基本、高レベル廃棄物は安定な形態に固化して30~50年間冷却貯蔵を行い、その後300メートル以深の地下に処分(地層処分)する計画だそうです。まだ具体的には決まっていません。
2011年4月5日付、英フィナンシャル・タイムズ紙、スウェーデンが30年前から計画していた放射性廃棄物の恒久的貯蔵施設の建設を正式に申請したそうです。地下に地層処分する世界で最初の国になるのかもしれません。
2000年12月22日付、朝日新聞によれば、ロシア下院環境委員のニグマトゥーリン議員の発言として、(当時)世界には20万トン(ロシアには1万4千トン)の放射性廃棄物があり、10年後には40万トンに増える見込みだという内容が記載されています。
2009年11月15日付、日経新聞、電気事業連合会によれば、国内17ヵ所の原発で貯蔵されている使用済み核燃料は2009年9末で1万2840トン(4年前の11%増)、貯蔵施設キャパは1万9420トン(4年前の9%増)となっています。一定期間保存した後は再処理を行うのでしょうが、六ヶ所村の再処理工場はトラブル続きで稼働時期が何度も延期されており現在は2012年からとなっているけど果たして予定通りいくのか? 現在は、フランスに委託して再処理しています。フランスの処理能力は2000トン/年。
低レベルの廃棄物の埋設処分についての考え方は以下の通り。地下50~100mの深さに埋設施設を設置する模様。数十年の保存で自然界に存在する放射能と区別できないぐらい減衰し、300年後には埋設した土地に建物を建てたり農耕地として使えるとあります。
高レベルの廃棄物はガラス固化体(体積:190L、重量:490kg)にした直後は、強い放射能を出し表面温度は200℃を超えるので専用貯蔵施設で30~50年間、冷却しながら貯蔵、その後、搬出して300m以深の地下に地層処分されるとあります。まだ処分場所ほか決まっていません。フランスへの再処理委託で発生した高レベルの廃棄物(ガラス固化体)は、六ヶ所村の貯蔵施設に保管されています。
世界各国の処分の考え方、日本は、処分開始予定時期が2030年代後半、処分量がガラス固化体で4万本以上となっています。
原子力発電が何のトラブルもなく運用されたとしても、再処理工場が何のトラブルもなく運用されたとしても、増え続ける放射性廃棄物は避けて通れない課題です。高レベルの廃棄物にあたっては、強い放射能と高熱を発するものを30~50年間にわたり冷却しながら管理しなければなりません。さらに、その後は、地下300m以深に埋設しなければなりません。
再処理工場に関しては、反原発の立場で原子力情報資料室に「止めよう六ヶ所再処理工場」というコーナーがあります。
http://www.cnic.jp/modules/rokkasho/
ある仮定の条件で事故が発生した場合の被害想定図は恐ろしいものです。
http://cnic.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=20
未来に対して、これらの遺産を残そうとしているわけです。
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